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任意整理の基本を弁護士が解説

1 任意整理とは

あなたは、18%を超える利率でお金を借りていませんか? わからない場合は、貸金業者から交付された書面の利率欄を調べてみましょう。多くの場合、それ以上の利息をとられていたことに気づかれると思います。

テレビでCMを流しているような大手消費者金融業者をはじめ、これまで、多くの貸金業者がそんな高い利息を徴収してきました。ところが、法律上、貸金業者が貸金に付する利率は年15%~20%を上限とし、これを上回る部分は無効と定められています(利息制限法1条)。すなわち、毎月請求を受けて続けてきた利息の支払額のうち、この法律の制限を超える利息については、本来支払う必要がなかったということになるのです。

「支払いの必要がないとはいえ、もう支払ってしまったのだからどうしようもない。」と後悔するのは早すぎます。

  • 弁護士の介入により、本人への借金取立てを止め、返済も一時停止する。
  • 支払う必要もないのに既に支払ってしまった利息を利用して借金の減額をはかる。
  • そこで減額した借金を分割して返済する話し合いを、弁護士があなたの代わりにまとめていく。

これこそが任意整理なのです。

まとめ

  1. 利息制限法により、徴収してよい利率には制限がある。
  2. 多くの貸金業者は、その制限に違反した高い利息を請求してきた。
  3. 任意整理では、借金の取立てを止めた上、支払い過ぎた利息を使って借金を減額し、分割返済の交渉をまとめていく。

2 任意整理のメリット・デメリット

任意整理にはいくつかのメリット・デメリットが存在します。ここでは主要なものをあげることにしますが、気になることがある方は、相談の際にお気軽にご質問ください。

メリット

弁護士の介入により本人への取立てが止まります。

金融庁のガイドラインにより、弁護士の介入後は、ご本人への直接の取立て行為は禁止され、精神的な平穏を回復できます。※この点は、破産・再生も同様です。

借金の返済を一時的に停止していただけます。

債権者との話し合いがまとまるまでは、原則として債権者への支払いは停止していただきます。この間に、弁護士費用等の積立を始めていただくことになります。

官報に情報が記載されることがありません。

任意整理は、裁判所を通さずに行う手続きであり公告の必要がないため、官報への情報掲載はありません。

裁判所等へ出向いたり・書類集めをする苦労が少なくて済みます。

原則として、裁判所へ行く必要・特別な書類収集に協力していただく必要はありません。※ 例外的に、別途訴訟を起こされてしまった際などは、裁判所に出向いて頂く必要がある場合がありますし、10年以上前ほどから借入がある場合、契約書や領収書などの書面や返済の事実が記載された通帳のご提出をお願いする場合があります。

借入原因は基本的に問いません。

ギャンブルや浪費により借金を作ってしまった場合でも利用できます。※ 但し、法に触れる借入原因があった場合などは例外です。

借金の減額が可能です。

利息制限法に基づく引きなおし計算により、当初の請求額から、借金を減額することができます。

デメリット

ブラックリストに登録される。

約定通りの返済が出来なかったことを理由に、信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリスト)。このため、この先一定期間は金融機関からの借入が難しくなります。

債権者の同意が不可欠である。

裁判所を通さない和解交渉を基本とするため、債権者側の同意が不可欠です。もっとも、あまりに理不尽な提案続けない限り、債務者の破産を回避するため、最終的には和解に応じてくれる債権者がほとんどです。

破産・再生に比較して、高額の支払原資が必要となる。

月々の返済に耐えうる収入があることが必要となります。

3 任意整理手続の流れ

こでは、任意整理手続きの一般的な流れを紹介します。

1.当事務所で相談・依頼

原則、即日債権者に対しあなたの代理人に就任した旨の連絡を行います。これにより取立など債権者からの連絡及び債権者への返済が止まります。

2.債権債務の調査

弁護士が、あなたが法的に返済しなければならない債務額(又は返還を受けることが可能な過払金額)を調査します。調査期間は、債権者数や借入期間により変動しますが、平均2~3ヶ月程かかります。

3.和解交渉開始

あなたとの相談により作成された和解案を基に、弁護士が各債権者と返済計画につき話し合います。

4.和解締結

後日のトラブルを回避するため、合意は書面にして残しておきます。

5.支払開始

合意書に記載された通りの送金を行います。

4 借金減額のからくり ~利息制限法による引直し計算~

利息制限法による借金減額

任意整理での借金減額の主要なからくりは、何と言っても利息制限法による引き直し計算です。これは、法律上返済義務のある債務額を確定するためには不可欠な作業であり、再生・破産手続の債権調査の過程においても行うこととなります。

利息制限法は、金銭貸付の際の利息を、その元本金額に応じて制限しています。そして、この制限を超える利息の定めは、借主がこれに同意して契約しても無効となります。利息制限法は、借主を不当な高金利から保護するため、借金の当事者の合意を無視してまでも、高い金利を無効にしてくれているのです(これを強行法規性があるといいます。)。

このため、貸主は、あなたが制限をこえる利率に基づいて請求され「利息として」支払いを続けてきた金銭を、「利息として」受け取ることはできなかったということになります。すなわち、当該金銭は「払い過ぎた利息」ということになるのです。

そして、この「払い過ぎた利息」は、その支払時点で借金の元本に充当したとみなすことが判例上認められています。そこで、この方法を使って、これまでの取引の経過を再計算すると、本当に支払わなければならない借金は、これまで現実に請求を受けてきた額よりも少ないということが判ってくるのです。

取引履歴の開示について

上記の計算をするためには、あなたがこれまでどのように借入・返済をしてきたかということについての資料(取引履歴)が必要となります。しかし、個人が各取引の度に交付される書面をいつまでも保管しておくことは困難です。他方、貸金業者は、法律上取引履歴の保存を義務づけられています。

そこで、債務整理の際には、弁護士が貸金業者に対し、取引履歴の開示を求めていきます。貸金業者に取引履歴の開示義務があることは、最高裁判所も認めるところですので、現在では、多くの業者は開示に応じてくれます。

5 和解交渉の内容~分割弁済の目安~

利息制限法による引きなおし計算の後、減額後の元本は、原則として3年(36回)払いで返済計画を立てます(ただし、元本の多寡、依頼者の経済状況などにより返済回数は変動します)。

また、減額後の元本には、原則として将来利息が付さないという内容の和解成立を目指します。もちろん、和解の成立には債権者の同意が不可欠ではありますが、多くの業者は、上記内容の提案を受け入れてくれている状況にあります。

このようにして、借金完済の目処が立ち、借入と返済を繰り返す毎日から解放されます。

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