交通事故事件の代表的な解決手続きをまとめてみました(なお、紛争処理センターを利用する方法は別記事にて紹介します)。事件の種類・性質によって、解決までの時間の長短は異なりますので、あらかじめご留意下さい。当事務所は、個々の依頼者のご希望をお聞きしながら、当該依頼者のニーズに合致する手続きをご提案致します。
(1) 示談交渉
話し合いによる解決をする手段です。
メリット
・早期の解決が期待できます。大きな争いのない事件であれば、交渉開始から約1~2ヶ月で和解に至ることもあります。
デメリット
・早期の解決を優先することになるため、示談の金額について、ある程度の譲歩をしなければなりません。もっとも、弁護士が交渉に当たる場合には、保険会社は弁護士会基準を基本にして示談金を決定することには応じることも珍しくないため、デメリットが小さいケースもあります。
(参考)任意保険基準について
多くの交通事故被害者は、ご本人自ら損害保険会社との示談交渉を行い、損害保険会社が提示する示談金により、示談に応じていると言われています。
しかし、一般には広く知られていないことですが、保険会社が示談金算定に当たって使用する「基準」は、あくまで任意保険会社のみが用いる独自の「基準」(いわゆる「任意保険基準」)なのです。
任意保険基準は、弁護士や裁判所など法律家の用いる「基準」(いわゆる「弁護士会基準」)とは全く別物であり、弁護士会基準の損害賠償額を下回る賠償額が算定されることが多くありますので、注意する必要があります。
(2) 民事調停
簡易裁判所で相手方と話し合いをする手続きです。
メリット
・比較的早期の解決が期待できます。調停申立から半年以内に調停が成立するケースも少なくありません。
・非公開の手続きですので、当事者のプライバシーは守られます。
・裁判所が介入して、相手方の譲歩を促してくれるケースも珍しくありません。
・調停が成立すると、調停調書には、訴訟の確定判決と同じ効力が認められるため、相手方が調停条項に反して支払をしない場合などには、強制執行手続きを行うことができます。
・当事者が合意に至らない場合には、裁判所が「調停に代わる決定」をします。決定が確定すると、訴訟の確定判決と同一の効力が認められます。
デメリット
・示談交渉と同様、調停成立のためにある程度の譲歩をする必要があります。もっとも、裁判所が介入する以上、弁護士会基準を基に損害額を算定して話し合いが進められるため、上記デメリットは、さほど大きなデメリットとまでは言えないかも知れません。
・調停に代わる決定に対して、2週間以内に異議が申し立てられると、調停は無効となります。
(3) 通常訴訟
公開の法廷で行う裁判手続きです。
メリット
・示談交渉や民事調停のよりも、高額の賠償金支払を命ずる判決を得られる可能性があります(ただし、被害者には、各損害が生じたことを立証する責任があります)。
・確定判決には、強力な法的効力が認められ、相手方が判決に従った履行を行わない場合には、強制執行手続きを行うことができます。
・精緻な証拠調べと事実認定によって、事故に関する事実関係を明らかにできる可能性が比較的高いと言えます。
デメリット
・解決には長い時間を要します。判決が出るまで、1年程度は、覚悟しておく必要があります。
・当事者にかかる心理的ストレスは、他の手続きに比して大きいと言えます。