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離婚と養育費の請求

熊谷オフィスの弁護士の小林です。以前の記事で、別居中の婚姻費用請求について解説をしました。

今回は、夫婦間に子どもがいる場合における、離婚後の養育費の請求について解説をしていきたいと思います(以下、多い例として、離婚に際して、母親が子どもの親権者として監護するケースを前提に解説します。)。

1 婚姻費用と養育費との違い

簡単に説明しますと、婚姻費用とはまだ離婚をしていない場合における生活費をいい(多くの場合は別居中に問題となります)、養育費とは離婚後の子どもにかかる生活費をいいます。

婚姻費用は、まだ婚姻関係にあることが前提ですので、他方配偶者と子どもの生活費の両方が含まれますが、養育費は、離婚をしていますので他方配偶者の生活費は含まれまず、子どもの生活費のみとなります。そのため、一般的に、養育費は婚姻費用よりも低額になるといえます。

2 養育費の請求方法

養育費についても、婚姻費用と同様、まずは当事者で話合いを行い、金額や支払方法等について合意ができれば、任意に支払ってもらえば良いでしょう。もっとも、離婚により、父親が離れた子どもの養育費を支払うことを拒否するケースや、母親が高額な養育費を求めるケースなどにより、双方の合意ができない場合があります。

その場合には、以下の「養育費請求調停の申立て」を行いましょう。

申立先について

養育費の請求調停の申立先は、原則として、「相手方の住所地の家庭裁判所」となります。これは婚姻費用の分担調停と同じですので、例えば、相手方が熊谷市に住んでいればさいたま家庭裁判所熊谷支部に、相手方が川越市に住んでいる場合にはさいたま家庭裁判所川越支部に申し立てることになります。

また、父親と母親が違う裁判所で調停を行いたいということで合意ができている場合には、その合意した裁判所に調停を申し立てることも可能です。その場合には「管轄合意書」という書面を作成して申立書と一緒に提出します。管轄合意書の書式は、裁判所のホームページにありますので参考にしてください。

必要書類や費用について

申立てに際して必要な書類や費用については、婚姻費用の分担調停の場合とほぼ同様です。

養育費の請求調停の申立ては、裁判所に備え付けてある「申立書」を作成して(書式は裁判所ホームページでもダウンロード可能です)、子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)を添付します。また、裁判所によっては、申立時に収入資料(源泉徴収票、確定申告書、(非)課税証明書など)の添付を求めるケースもあります。収入資料は、養育費金額の計算のために必要となる書類ですので、併せて準備しておきましょう。
申立てにかかる費用としては、裁判所の手数料としては1200円の収入印紙が必要となります(別途郵便切手代)。

婚姻費用の金額の算定方法

養育費金額の算定方法ですが、こちらも婚姻費用の分担調停とほぼ同様です。すなわち、双方の意見を参考にして、金額について合意が形成できればその金額で調停成立ができますが、実際に調停申立てを行っている以上、互いの言い分は対立していることの方が多いでしょう。

その場合には、養育費の「算定表」を用いて金額を算出していきます。婚姻費用の場合と同様、①当事者双方の収入と②子どもの数及び年齢を基本的要素として養育費金額を算出するためのもので、調停においては、双方対立がある場合、調停委員からこの「算定表」による金額が伝えられ、協議が進められることがほとんどでしょう。

なお、この「算定表」が使えないケース(例えば、子どもが4人以上いる場合、当事者の収入が高額で記載の金額を上回る場合など)では、この算定表のベースとなっている算定式を用いて金額を計算していきます。

養育費の始期と終期

(1)始期について

始期について、様々な考え方はありますが、請求時から、というのが一般的といえます。そのため、婚姻費用の場合と同様、相手方から任意で支払ってもらえない場合には、速やかに家庭裁判所に調停申立てを行いましょう。

(2)終期について

養育費はいつまで支払ってもらえるでしょうか。通常、養育費は扶養が必要な状態、つまり未成熟の子どものために支払われるものです。したがって、一般的には、子どもが成年となるまで(子どもが20歳になる日の属する月まで)とされるケースが多いです。

ですが、最近は、大学や専門学校へ進学するケースも多くなってきており、このような場合、20歳を過ぎても子どもは未だ就労しないことになりますので、扶養が必要な状態と考えることができます。そのため、審判などでは、夫婦の学歴や家庭環境なども考慮した上で、大学卒業までの養育費支払を認めているものもあります。

3 養育費の変更について

一度決められた養育費の金額については、事情の変更が認められれば、増額や減額を求めることも可能です。その場合、当事者同士で話合いをすることも当然可能ですが、裁判所での養育費の変更のための調停を申し立てることも可能です。

なお、「事情の変更」とは、当事者の収入の変化(例えば、義務者(父親)の収入が大幅に減ったため、義務者から養育費の減額を求めるケース)や、当事者の再婚及び出産(例えば、義務者(父親)が再婚して扶養すべき人数が増えたとして、義務者から養育費の減額を求めるケース)、子どもの教育費の増大(例えば、権利者(母親)が監護する子どもが私立大学に進学して教育費が増大したとして、権利者から養育費の増額を求めるケース)などが考えられます。

養育費の変更

4 養育費が支払われなくなった場合の対策方法

この点については、婚姻費用の場合とほぼ同様です。審判書・調停調書や執行受諾文言付の公正証書といった債務名義がある場合には、強制執行による回収が可能です。

5 最後に

養育費は、子どもを育てていく上で非常に重要なものですので、支払ってもらう側(権利者)からすれば最大限の養育費の支払を求めたいものです。他方で、支払う側(義務者)からすれば、適正な養育費金額であれば支払うけれども、過大な養育費の負担までは厳しいといった場合もあるかと思います。

我々弁護士は、依頼者の立場に立ち、依頼者の置かれてるケースにおいて最大限の利益が実現できるよう尽力をさせていただきます。養育費に関してお悩みの場合には、是非一度お気軽にご相談ください。

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