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別居中の婚姻費用分担請求調停

婚姻費用請求
小林祐太郎

熊谷オフィス所長弁護士

熊谷オフィスの弁護士の小林です。離婚前の別居について書いた以前の記事では、夫婦が別居するに当たって大切になるのが、別居後の生活費の確保の問題であることを説明しました。

離婚前の別居

別居中の婚姻費用の請求は、まずは、相手方が任意で支払ってくれれば問題はありませんが、私たち弁護士が関与するケースですと、相手方(多くは夫側)が婚姻費用の支払を拒否するケースも少なくありません。その場合には、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求の調停を申し立て、婚姻費用の請求をすることになります。そこで、今回は、婚姻費用の請求、特に相手方が任意に支払ってくれない場合の婚姻費用の請求の調停について、解説をしていきたいと思います。

申立先、必要な書類や費用について

婚姻費用の分担請求調停は、原則として、「相手方の住所地の家庭裁判所」に申し立てることになります。例えば、熊谷市で同居していたが夫婦のうち、妻が家を出て実家のある川越市に転居したとしましょう。この場合、妻の側から婚姻費用の分担調停を申し立てる場合には、相手方となる夫が熊谷市に住所があるため、さいたま家庭裁判所熊谷支部への調停申し立てとなります。逆に、夫の側から申し立てる場合には、さいたま家庭裁判所川越支部に申し立てる必要があります。

申立てに際しては、申立書を作成し、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)を添付する必要があります。申立書は裁判所に備え付けてありますので、事前に戸籍謄本を取得してから裁判所に行けばスムーズな申立てが可能です。なお、以下で述べるように、婚姻費用金額を「算定表」を使用して算出するには、次のような収入資料が必要となるので、こちらも準備をしておくとよいでしょう。

  • 源泉徴収票
  • 確定申告書
  • (非)課税証明書など

なお、申立てにかかる費用は、裁判所の手数料としては1200円の収入印紙が必要となります。その他、相手方への書類送付にかかる郵便切手代などが必要ですが、比較的安く利用できるのがメリットの一つといえます。

婚姻費用の金額はどのように決まるか

調停手続は、あくまで話合いが基本になっていますので、まずは申立人が求める金額(申立書に記載します。)と、それに対する相手方の意見により、双方合意が形成できればその金額で調停成立となります。

もっとも、通常は、感情的な対立などもあり、お互いの意見には隔たりが大きいケースが多いでしょう。その際に参考とされるのが、いわゆる「算定表」です。これは、当事者双方の収入や、子どもの数及び年齢を基本的要素として、婚姻費用金額を簡便に算出するためのツールとして現在の実務において広く使用されています。

そのため、調停の場においても、この「算定表」により算出される金額をベースとして、当該事案の特別な事情(住宅ローンの負担があるか、子どもが私学に進学しており学費が高額であるか等)を考慮して金額の合意を目指して協議がなされることが一般的です。

なお、調停において合意形成ができなかった場合(調停不成立となった場合)、手続は自動的に審判手続に移行します。審判においては、裁判所が、上記で説明したような各事情を総合的に考慮して、金額を決定することになります。

婚姻費用はいつから請求できるか

婚姻費用については、現在の裁判所の考え方として、「請求をしたとき」から認められるというのが一般的です。そのため、例えば、平成28年4月から別居を開始したところ、相手方から婚姻費用の支払をしてもらえなかったため、平成28年10月に婚姻費用の分担請求調停を申し立てたとします。この場合、理屈としては、別居開始から婚姻費用をもらっていない期間である4月から9月分も請求できるのですが、一般に、調停や審判では、申立てをした平成28年10月分から認められるということになります(なお、過去の未払の婚姻費用は、離婚の際の財産分与において考慮される余地はあります。)。

そのため、別居を開始した場合で、相手方から任意の支払が期待できない場合には、早々に家庭裁判所に調停の申立てを行うことが重要といえます。

婚姻費用が支払われなくなった場合の対策方法

調停や審判で決められた婚姻費用を相手方が支払わなくなった場合にはどうしたよいでしょうか。

その場合には、いわゆる強制執行により相手方名義の財産から強制的に婚姻費用を回収することができます。例えば、裁判所に債権差押命令の申立てを行い、相手方名義の預貯金や給料を差し押さえ、そこから回収することになります。

調停の場合の調停調書、審判の場合の審判書などは債務名義といって速やかに強制執行手続を行うことが可能です。他方で、当事者間で作成した合意書や覚書などは債務名義にはなりませんので、話合いで任意に婚姻費用を支払ってもらえる場合でも、可能であれば「強制執行認諾文言の入った公正証書」(婚姻費用の支払を怠った場合には、強制執行されても構わないという条項の入った公正証書です。)を作成しておくと理想といえます。

なお、公正証書は「公証役場」において、公証人に作成してもらうことになります。公証役場は全国各地にあり、熊谷市においては、JR熊谷駅北口徒歩数分のところに「熊谷公証役場」があります

まとめ

経済力のない専業主婦などの方が別居をする場合、婚姻費用の確保は極めて重要な問題です。相手方が離婚を拒否している場合など、別居状態が長期にわたることが予想される場合であれば尚更といえます。
そして、しっかりと適正な婚姻費用を確保するためには、迅速な対応と適切な知識が必要となります。そのため、お悩みの場合には、是非一度弁護士への相談をご検討ください。

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