ブログ

フランチャイズ問題の概説

宮嶋太郎

虎ノ門オフィス所長弁護士

弁護士がフランチャイズの歴史や現代におけるフランチャイズ問題の現状について概説します。

フランチャイズの歴史

フランチャイズとは

フランチャイズは、一般的には以下のように定義されます。

事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう(社団法人日本フランチャイズチェーン協会編「フランチャイズ・ハンドブック」)。

フランチャイズの起源と拡大

フランチャイズのシステムは19世紀アメリカを起源とします。当初は、「製品フランチャイズ」と呼ばれる、いわゆる代理店に近い形式のフランチャイズチェーンが主流でしたが、1900年代中頃から、上記の定義に近い「ビジネスフォーマット型」のフランチャイズが広がり始めました。
日本では、ビジネスフォーマット型フランチャイズとして、1963年にダスキンと不二家のフランチャイズ店が開店したのを皮切りに、数々のフランチャイズチェーンが出現・成長し、現在では、フランチャイズチェーン数で1194チェーン、総店舗数23万店余を超えるに至っています(JFA2006年度統計調査による。)。

フランチャイズに関するトラブルの現状

フランチャイズに関するトラブルの発生

しかしながら、このようなフランチャイズチェーンの成長の一方で、フランチャイズ契約に関する被害やトラブルも数多く出現するようになってきています。詳細は別の箇所で解説しますが、典型的なものだけでも、勧誘時の不正確な情報提供など契約締結に関わるトラブル、フランチャイズ契約上の指導援助義務・ロイヤリティーの未払いなど契約履行上のトラブル、フランチャイズ契約上の債務不履行解除に関する違約金請求、加盟金・保証金返還請求、及び競業行為の差し止め請求などのフランチャイズ契約終了に関わるトラブルといった、様々な形態のトラブルが見られます。そして、これらのなかには、本部と加盟店の紛争が裁判所に持ち込まれ、調停や訴訟にまで発展するケースもあります。また近年では、コンビニ廃棄ロスチャージ訴訟、コンビニ請求書・領収書開示請求訴訟などの新しい紛争類型も見られるようになり、本部と加盟店の間のトラブルも多様化しつつあります。
ここでは、このようなフランチャイズ契約に関わる訴訟調停等を含めた被害やトラブルを総称してフランチャイズ問題と呼びます。

フランチャイズ被害の深刻さ

フランチャイズ加盟店の中には、いわゆるメガフランチャイジーと呼ばれる企業のように、多数の店舗を運営しフランチャイズ本部に勝るとも劣らない力を有するフランチャイジーもありますが、いまだ加盟店の多くは個人事業者や零細な個人企業です。
このような加盟店が、フランチャイズ本部の詐欺的な勧誘や一方的なフランチャイズ契約によって被害を被ると、その被害が加盟店オーナーの生活を直接脅かし、その被害の度合いは深刻なものとなります。

フランチャイズ問題の紛争類型

以下では、フランチャイズ契約をめぐって起こる紛争のうち、比較的多く見られる類型の紛争を解説します。

1 売上予測など不適切な事前説明(情報提供義務違反)

本部が加盟店に対し、フランチャイズ加盟契約の勧誘の際、誤った売上予測や収益予測を提示したとして、加盟店が本部に対してその責任を追及するケースです。なかには、未だに全く客観的な根拠を欠く詐欺的な売上予測報告書を提示してフランチャイズ契約の勧誘をする本部もあり、フランチャイズトラブルの中では比較的多くの判例が存在する類型です。
ほとんどの場合、加盟店から本部に対しての損害賠償請求という形で問題となりますが、詐欺による不法行為に基づく損害賠償請求の主張がなされることもあります。

2 指導援助義務の不履行

加盟店が本部に対し、本部がフランチャイズ契約上に定められた加盟店に対する指導・援助義務を怠ったとして、その責任を追及するケースです。スーパーバイザー(SV)と呼ばれる本部側社員が何らの指導援助も行わず、極端な場合には、加盟店を訪問したことすらないというような場合もあります。このような事例では、加盟店からの損害賠償請求やロイヤリティーの支払い拒絶という主張がなされることが多くあります。

3 商圏保護義務違反(テリトリー権侵害

フランチャイズ本部が既存加盟店と同一の商圏内に新規店舗を出店するなどし、既存加盟店の売上に悪影響がでることがあります。このような場合に、既存加盟店から本部に対し、当該出店によって発生した損害の賠償や、新規出店の差し止めを求めることがあります。請求の根拠としては、フランチャイズ契約上に商圏の保護が謳われており本部がこれに違反したというものや、契約上そのような規定はないけれども、本部の新規出店が信義則に反するというものなどが考えられます。

加盟店が本部に対し、本部がフランチャイズ契約上に定められた加盟店に対する指導・援助義務を怠ったとして、その責任を追及するケースです。
スーパーバイザー(SV)と呼ばれる本部側社員が何らの指導援助も行わず、極端な場合には、加盟店を訪問したことすらないというような場合もあります。このような事例では、加盟店からの損害賠償請求やロイヤリティーの支払い拒絶という主張がなされることが多くあります。

4 不当な更新拒絶

フランチャイズ契約では、一定の契約期間が定められることが多くありますが、契約期間が満了する際、本部が契約の更新を正当な理由なく拒絶することがあります。
単純に更新を拒絶するケースや、更新の条件として加盟店に不利な条件変更を提示しこれに応じないときは更新を拒絶するというケースなど様々なパターンがあり得ますが、加盟店は、フランチャイズ店の開店に当たって多額の投資をし、その投資の回収を複数回の契約更新を見込んで予定していることもあり、このような場合に更新を拒絶されては膨大な損失を被ることになります。このため、加盟店から本部に対して、契約の更新や損失の補償を求めるという形で紛争が顕在化します。

5 解約時の違約金請求

フランチャイズ契約解約時(フランチャイズ店閉店時)の条件を巡って本部と加盟店の間で紛争となることがあります。
加盟店がフランチャイズ契約上の何らかの義務に違反し、本部からフランチャイズ契約の解除とともに損害賠償の予定としての違約金を求められるケースや、加盟店に特に契約上の義務違反がなくとも期間満了前の解約一時金として違約金の支払いを求められるケースなどがあります。
加盟店側としては、請求の基礎となっている義務違反の存在を争ったり、また、そのような違約金・解約金を規定した条項自体の有効性を争ったりすることになります。

6 秘密保持義務・競業避止義務に関する紛争

フランチャイズ契約においては、加盟店は、フランチャイズ本部の経営上のノウハウを外部に漏らさない義務(秘密保持義務)を負わされることが通常です。さらに、ノウハウの流出を防ぐために、秘密保持義務を補完するものとして、競業避止義務(同一・同種の事業等を行わない義務)を負わされることがあります。
フランチャイズ本部の指導援助に見切りをつけ、加盟店がフランチャイズチェーンを離れて、独自にあるいは他のフランチャイズチェーンに加盟して従前と同様の事業を行おうとするような場合に、本部から加盟店に対し、当該事業の差し止めや損害賠償請求がなされて紛争となるケースが典型的です。
このような場合、加盟店としては、そもそも保護に値するノウハウの存在がないのではないかと争ったり、競業避止条項が過度に職業選択の自由・営業の自由を選択するものであり無効であると主張して争うケースが多く見られます。

7 コンビニ会計問題

1) コンビニエンスストアの会計システム

コンビニエンスストアは、フランチャイズによる店舗展開が非常に盛んであり、国内には数万店のコンビニフランチャイズ店が存在します。
ところで、コンビニフランチャイズでは、その大半のチェーンにおいて、各加盟店の日々の売上を一度本部に全額送金させ、本部が仕入商品の代金(支払代行のためのもの)やロイヤリティーを差し引いた上、残金を加盟店に返還するという会計システムが取られています。このような会計システムを巡って、近年、いくつかのタイプの紛争が見られます。

2) 廃棄ロスチャージ問題

第1は、いわゆる「ロスチャージ問題」「廃棄ロス問題」と言われる問題です。
これは、コンビニのフランチャイズ契約書に記載されたロイヤリティーの計算方法についての紛争ですが、加盟店の契約時の認識内容と異なった計算方法(結果として廃棄ロスにもチャージがかかるのと同様の計算方法)に基づいてロイヤリティーが算出され売上送金の中から控除されており、これが本部の不当利得となるのではないかというものです。
この問題に関しては、①客観的な契約内容と本部の計算方法が合致しているかという点、②加盟店契約の際加盟店側に本部の行う計算方法について錯誤がなかったかという点が主要な争点となっています。

3) 支払代行に関する問題

第2は、支払代行に関する適正会計の問題です。
コンビニ本部は、各加盟店が仕入先から仕入れた商品の代金を、各加盟店が本部に送金した売上金の中から各加盟店に代わって支払っています。これを商品仕入代金の支払代行と言いますが、この支払代行の際、本部は各加盟店に対し、仕入先から加盟店に発行されたはずの請求書あるいは領収書を交付しない場合がほとんどです。このようなことから、加盟店側が本部会計の適正性に疑問を呈し、請求書や領収書の開示を求める紛争が起こっています。かかる紛争の背景には、加盟店が預託した売上金について、本部が加盟店との契約上取得が認められていない利益(加盟店に未報告のリベート等)を得ているのではないかという問題意識があると考えられます。

※上記の問題について、平成20年7月4日、最高裁判所第2小法廷により、コンビニエンスストア本部の支払代行内容についての報告義務を認める判決が下されました(結論としては、具体的な報告内容を審理させるため東京高裁に差戻)。

8 フランチャイズ本部不祥事の責任追及

近年、フランチャイズ本部の不祥事が報道でも報じられています。フランチャイズチェーンは同一のイメージの下に事業を行うことをその本質としていることから、本部において不祥事が発生すると、必然的に加盟店のイメージも低下し、これが加盟店の売上に悪影響を与えることは必至です。そのような場合に、加盟店が本部に対し、減少した売上の損害の賠償を求めて紛争となるケースがあります。

フランチャイズ~トラブルの予防と解決~

1 フランチャイズチェーンへの加盟を検討されている方へ

1) 十分な情報開示を受け慎重な判断を

フランチャイズ契約は、見方を変えれば、元本割れのおそれのある投資商品とも言えます。
本部から十分な情報開示を受け、自身でもできる限りの調査を行い、その収益の可能性及びリスクを十分に理解した上で、フランチャイズ加盟契約を締結するかの判断を行うようにしてください。
もちろん、結果的に本部の情報提供が不十分だった場合には、法的責任追及をすることは可能です。しかし、本部がそのような責任をはじめから素直に認めることは少なく、責任追及の場面では紛争となることは通常避けられません。

2) 加盟検討段階で実践しておくべきこと

このような事態を避けるために、以下のような事項を実践することが有効でしょう。

  • 本部に紹介された以外の加盟店の話をよく聞くこと
  • すぐに契約せず、ある程度の時間をおいて考えること
  • 勧誘の際に提示された情報は書面で交付を受けること
  • 契約書の内容をよく検討すること

2 フランチャイズトラブルに巻き込まれてしまった方へ

1) フランチャイズに関するトラブルの発生

フランチャイズ加盟店オーナーがどれだけ慎重にフランチャイズ契約締結の是非を検討しても、本部の情報提供が不十分であったり、契約後に果たすべき義務を履行しなかった場合などには、トラブルが発生してしまうことはあります。
そのようなトラブルに巻き込まれて、事業計画どおりの売上が上がらず、予想外の経費負担に苦しみ、事業の行く末を案じては眠れない日々を過ごしている加盟店オーナーも少なくないものと思われます。

2) 第三者への相談が解決の第一歩

そのような状況にある方は、一人で悩むことなく、是非とも第三者に相談してみてください。
日頃から連絡を取り合っている外の加盟店の方でも構いませんし、我々弁護士などの法律家でも構いません。事業の継続を前提にロイヤリティーや賃料等の減額交渉をする方法や、事業の停止を前提に、錯誤無効・詐欺取消による不当利得返還請求や債務不履行・不法行為に基づく損害賠償請求、違約金減額の交渉あるいは訴訟を行う方法、あるいは新たな一歩を踏み出すために現在の事業の倒産処理をする方法など、トラブルの経緯と現状に応じて最適な解決方法を検討することが、問題解決への第一歩です。

フランチャイズに関する法令等

民法

私法の一般法です。フランチャイズ契約の当事者間においても、契約や他の法律等に規定がない限りは、民法が適用されます。

商法

商人及び商取引に関連する事項を規律する法律で、民法の特別法と位置づけられています。フランチャイズ契約も商人間の契約として商法の規律を受けます。

中小小売商業振興法(小振法)

中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業者の振興を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。同法第11条は、「特定連鎖化事業」に加盟する中小小売商業者の保護施策として、特定連鎖化事業を行う者に対し、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者に加盟契約の内容等一定の事項を記載した書面の開示を義務づけています。
上記の「特定連鎖化事業」は、主としてフランチャイズチェーンを対象としていますが、連鎖化事業に該当するための要件として、「主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあつせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業」であることが必要であるため、フランチャイズチェーンのなかにもこれに該当しないものがあることについては注意が必要です。

独占禁止法

正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。
フランチャイズ契約との関係では、同法19条の「不公正な取引方法」の規定が主として問題となります。不公正な取引方法の具体的な内容は、公正取引委員会が定める不公正な取引方法の一般指定に規定されています。フランチャイズ本部の加盟勧誘が欺瞞的顧客誘引(一般指定第8項)に該当しないか、フランチャイズ契約上の加盟店に対する拘束が優越的地位の濫用(一般指定第14項)にあたらないかなどの点が検討されることになります。
独占禁止法に関しては、同法を所管する公正取引委員会が「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」と題するガイドラインを公表しており、フランチャイズ問題に関する独占禁止法の位置づけを検討する際に参考になります。

商標法・不正競争防止法

商標法は、商品やサービスについて事業上使用するマークを保護する法律で、特許庁での手続により登録されている登録商標を保護しています。
不正競争防止法は、広く不正な競争行為を防止するため、不正競争行為の差し止めや損害賠償等について規定しています。同法によって、商標法によっては保護されない、事実上使用されている未登録商標についても一定の保護が与えられます。

JFA自主基準

社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は、フランチャイズ・システムの健全な発展を図ることを目的に、1972年に設立された公益法人です。同団体は、多数のフランチャイズ本部が加盟しており、フランチャイズの健全な発展のため、「倫理綱領」「自主開示基準」などの規範を自主的に定めています。法的な拘束力はないものの、諸法令解釈のための参考となります。

労働法

フランチャイズ契約は、フランチャイズ本部と加盟店の間の契約ですが、これは「事業者対事業者」の契約であり、「事業者対労働者」の間で締結される労働契約とは異なるとされるのが一般的です。
しかしながら、フランチャイズ契約という名称が与えられていても、加盟店オーナーが独立事業者としての実質を有さず、フランチャイズ本部に対する使用従属性が認められる場合には、労働基準法第9条所定の「労働者」に該当あるいは準ずるものとして、加盟店オーナーに対する労働法上の保護が与えられるべきとの見解も存在します。現に、欧州においては、このような考え方に基づいた裁判例も見られます。

関連記事

  1. フランチャイズ加盟者のための顧問契約のご案内

最近の記事

  1. 婚姻費用請求
  2. 婚姻費用請求

カテゴリー

PAGE TOP