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労働審判を起こされた経営者がすぐにすべきこと

労働審判制度は、原則3回以内という審理回数の制限があります。もっとも、実質的には、第1回期日における当事者の主張立証が労働審判委員会の心証を決定的に左右することになるため、第2回以降の期日で追加の主張立証を行っても、労働審判委員会の心証が固まっており、時すでに遅しというケースも珍しくありません。 このように、労働審判は時間との勝負という側面があるため、労働審判を起こされた会社側の経営者は、とにもかくにも迅速な対応が重要となってきます。 以下では、労働審判手続申立書を受け取った会社経営者様が、労働審判の第1回期日までに行っておくべきことをまとめてみました。

弁護士への相談まで

第1回期日を確認

従業員から労働審判を起こされた会社経営者は、裁判所から労働審判の申立書及び関係書類の送達を受けることによって、会社が労働審判を起こされたという事実を知ることになります。その関係書類の中に、労働審判手続期日呼出状(及び答弁書催告状)という書類が同封されているはずですので、決してあわてることなく、まずはそこに記載された第1回期日の日程を確認してください。そこから逆算された日数が、あなたの会社に与えられた労働審判の準備期間です。

弁護士への相談を予約

労働審判手続きは、繰り返し述べているとおり、短期決戦、スピード重視の手続きであるということができます。このため、労働審判の申立書を受け取った使用者側(会社)としては、少しでも早く弁護士に相談できるよう、法律相談の予約を取るようにしてください。弁護士への相談が遅くなればなるほど、第1回期日までの間にかけることのできる準備期間は減っていくことになります。できれば、申立書の送達を受けた日から数日以内に相談のできる弁護士がよいでしょう(例えば、2週間先まで予定がいっぱいで相談できないような弁護士では、相談後の準備も多忙のためままならない可能性すらあります。)。

どの弁護士に相談すべきか

御社に顧問弁護士がいる場合には、社内の事情を日常から理解している顧問弁護士への相談が第一選択として考えられます。もっとも、顧問弁護士が労働審判手続きに不慣れな場合や、そもそも顧問弁護士がいない企業の場合であれば、早急に労働審判を得意とする法律事務所を探して相談するようにしてください。労働審判の対応を行う場合、弁護士と会社経営者様や担当者様との綿密な打ち合わせが必要となることが通常ですので、あまり遠方の法律事務所とういうよりも、会社の近くにオフィスのある弁護士に相談するのがよいと思われます。

弁護士に相談する前の準備

弁護士への相談の際には、問題となっている事実関係について時系列でまとめておくことをお勧めします。こうすることで、弁護士の事実関係の把握にかかる時間がかなり短縮されるとともに、事案についての理解も深まります。また、労働審判の申立書を持参することはもちろん、関係すると考えられる資料は全て持参してください。例として、残業代請求を受けた事案であれば、次のような資料は基本的なものとして持参するとよいでしょう。

  • 就業規則
  • 賃金規定
  • 申立人となっている従業員の履歴書・職務経歴書
  • 申立人となっている従業員の給与明細書
  • 賃金台帳
  • タイムカードや業務日報などの労働時間がわかる資料

第1回期日の変更は可能?

相談した弁護士が既に指定されている第1回期日に都合がつかない場合、日程の変更は可能でしょうか。この点、労働審判の審理を充実したものにするためには、会社側の事情を考慮した日程の変更が許されるべきという考え方もありますが、他方で、無制限にそのような日程の変更を認めてしまうと、労働審判制度の趣旨である迅速な紛争解決が困難となってしまうことも考えられます。このため、東京地裁などでは、期日呼出状が送達された直後の変更申立以外は、日程変更を認めないという運用がなされています。

主張の組み立てと証拠の確保

主張の組み立て

弁護士との相談により、労働審判において、会社としてどのような事実及び法的主張をするかを組み立てていきます。例えば、解雇無効を申立人が主張している事案であれば、解雇の根拠となっている具体的事実と、その事実関係が解雇権濫用法理をクリアできるものであるということを、手元の資料と照らし合わせるなどして組み立てていきます。

書証について

弁護士に相談後、会社としては、弁護士のアドバイスや指示を受けつつ、申立書に記載された事実関係を否定する証拠、会社側の主張を裏付ける証拠を収集することになります。書面のような客観的な証拠は、通常の訴訟と同様、労働審判においても判断者の心証形成上重要なものとなりますので、必要な書類については余すことなく収集・提出することが必要です。もっとも、ど労働審判手続では、労働審判員が職業裁判官ではないこと、審理に掛けられる時間が限定的であることから、あまりに大量の証拠を出しすぎると、返って重要な証拠が埋没してしまいかねませんので、証拠の出し過ぎにも注意が必要です。

人証について

労働審判の期日には、申立の内容に詳しい当事者や利害関係人が出席することが想定されていますので、会社としては、社内のどの人物を出席させるのかについて検討しておかなくてはなりません。経営者自らが出席するケースもありますが、申立人となっている従業員にかかわる事情を経営者が直接は把握していない場合、当該従業員の上司や人事担当者などを同行するケースもあります。また、その人物が労働審判の期日において労働審判委員から質問されたときのために、ある程度事実関係を整理して話せるような準備もしておくべきでしょう(労働審判の期日当日は、代理人弁護士ではなく、その人物が直接話す必要があります。)。

和解に関する検討

労働審判では、第1回期日から調停が試みられることも多いので、調停によって紛争を解決しても良いと考えている場合には、事前に弁護士と相談したうえで、おおよその解決水準を確認しておくことも必要です。

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