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労働審判の流れ

使用者側(会社側)である経営者様が労働審判の対応をするにあたっては、労働審判の手続き流れを大まかに把握しておくことが不可欠です。流れを把握しておくことにより、労働審判にある程度の心の余裕をもって臨むことができ、計画的な準備をすることができるようになるものと思われます。以下では、労働審判手続がどのような流れで進むのかについて、時系列に沿って説明します(なお、東京地方裁判所に労働審判が申し立てられた場合を前提にしています。)。

1 労働審判の申立書等の到達と第1回期日の指定

労働審判においては、申立がなされてから、概ね40日以内に第1回期日が指定されます。第1回期日の指定がされると、裁判所から相手方(会社側)に対して、労働審判の申立書、証拠書類の写しとともに、期日呼出状及び答弁書催告状(答弁書の提出期限は、第1回期日の7日前程度とすることが多いです。)が送付されます。

また、労働審判手続の概要、答弁書提出及び期日変更についての注意事項を記載した「注意書」、さらには委任状及び答弁書等の提出に関する留意事項と期日までに十分な準備をすることや事情をよく知る担当者等の同行について協力を求める「労働審判事件の進行について」と題する書面も送付されます。

2 代理人の選任

申立書が届いてから答弁書提出までの期間は、約1ヶ月程度しかありません。そこで、相手方(会社側)としては、労働審判の申立書が届いたら、直ぐに、弁護士に相談し、代理人を選任することが重要となってきます。

3 期日の変更について

相手方(会社側)もしくは相手方代理人が、裁判所に指定された第1回期日にどうしても都合がつかない場合、期日の変更を申し立てることになります。東京地裁の場合、期日の変更については、審判員を指定するまでの間(通常は、第1回期日の2週間から3週間前までの間)に、期日変更の申立てがあった場合は、申立人の意向や具体的な変更理由等も考慮しつつ、認めることがありますが、その時期を過ぎてしまうと認めない運用をしているようです。

4 答弁書の作成等(第1回期日までの準備)

相手方(会社側)は、指定された期日までに、答弁書を提出する必要があります(実際に作成・提出するのは、代理人になります。)。労働審判においては、原則、第1回期日までに、主張や証拠を全て提出することとされていますので、答弁書には相手方(会社側)の主張を漏れなく記載しなくてはなりません。そのため、答弁書作成のためには、相手方(会社側)と代理人で十分な打ち合わせを重ねる必要があります。

また、労働審判の出席者、労働審判における解決の方向性等についても、相手方(会社側)と代理人で事前に協議して、決めておく必要があります。労働審判の出席者に関しては、通常、紛争の具体的事情を知る申立人(労働者)の直接の上司等が、出席することが多いです。

5 第1回期日の審理

第1回期日において、争点整理、証拠調べ、調停手続までが行われます。具体的な流れとしては、期日が開始されると、労働審判委員会の紹介の後、当事者双方の出席者を確認し、争点を整理したうえで、申立人本人や相手方関係者(会社側関係者)を対席で審尋します。基本的には、審判官から直接質問がなされ、審判員も適宜質問をするようなかたちで、手続が進行していきます(代理人から質問することもあり、特に、形式にはこだわっていないようです。)。

証拠調べ(審尋による事実関係の確認)が終わった段階で、当事者双方が退席し、労働審判委員会で、審尋の結果等を踏まえた評議が行われます。労働審判委員会は、評議により心証を確認し、解決の方向性について検討したうえで、今度は、個別に、当事者から解決に向けての意見聴取を行います。この段階から、労働審判委員会は、調停手続に入るため、当事者双方に事件の見通しを告げたうえで、委員会としての具体的な解決案(調停案)を提示することが一般的です。

第1回期日は、争点整理、証拠調べ(事実関係の確認)に多くの時間を要するため、2時間程度の時間がとられるのが通常です。

6 第2回期日以降の審理

第2回期日以降は、基本的には第1回期日で証拠調べは終了しているため、補充立証等がなされることもあるが、調停成立に向けての手続が行われます。第1回期日で、労働審判委員会から具体的な調停案が提示されている場合には、第2回期日の冒頭に調停が成立することも多いですが、複雑な事案等の場合は、第2回期日での双方の意見聴取の結果を踏まえて、調停案が提示されることになります。第2回期日以降は、1時間程度の枠で時間をとられることが多いです。

相手方(会社側)としては、調停成立の可能性がある場合は、持ち帰って社内で検討するといった過程を省くことができ、解決も早くなるため、決済権限のある役員等を労働審判に同席させることが望ましいです。

7 調停の成立もしくは労働審判の告知

労働審判は調停の成立により終了することが大半です(しかも、多くの事案では、第2回期日が終了するまでの間に、調停が成立します。)。しかしながら、不調となった場合は、委員会から手続の終結が宣言され、労働審判が告知されます。労働審判は、当事者が出頭している労働審判手続の期日の中で、審判官が、その主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法で行われます。労働審判は、通常、第3回期日において告知されることになります。

8 労働審判に対する異議申立て

当事者は、労働審判の結果に不服がある場合、労働審判の告知を受けた日から(もしくは、審判書の送達を受けた日から)2週間以内に、裁判所に対し、異議の申立をすることができます。労働審判に対して異議の申立があった場合は、労働審判はその効力を失い、労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます(第一審裁判所の通常訴訟への移行)。相手方(会社側)としては、2週間という限定された期間の中で、労働審判の結果をよく検討し、異議を申し立てるのか否かを決めなくてはなりません。

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